住環境や時間を気にせず、自由にグランドピアノが弾けたら－そんなピアニストの声に応えるべく、グランドピアノの弾き心地の再現に徹底的にこだわった、ハイブリッドピアノが『NV10S』です。最新技術を用いた新しい設計により、コンパクトなボディのなかに、グランドピアノと同じ鍵盤、アクション、ダンパー機構を搭載。現代の生活にフィットした、“最小のグランドピアノ”をめざしました。
鍵盤を弾くと、ハンマーが弦を叩く―この「アクション」と呼ばれる機構のなかに、1927年の創業以来磨き続けてきた、カワイピアノの技術が詰め込まれています。
創業者である河合小市が、独自のアクション機構を開発して以来、カワイは画期的なアイデアと確かな開発力で常にひたむきにピアノ作りを続けてきました。
ハイブリッドピアノ『NV10S』には、そんなカワイが開発した“本物”のピアノアクションを搭載。連打性能やレットオフの感覚、鍵盤のわずかな沈みや指への抵抗感など、グランドピアノの精緻なニュアンスを忠実に再現。ピアニストの理想にかなう高い演奏性と、豊かな表現力を実現しました。カワイのノウハウのすべてが詰め込まれた、心地良い演奏フィーリングをご体感ください。
『NV10S』の大きな特徴は、グランドピアノと同じ「ダンパー機構」を搭載していること。ピアニストが鍵盤に触れていない時、弦を押さえて振動を止めているのがダンパーです。鍵盤を弾くと、対応するダンパーが弦から持ち上がり、解放された弦が発音します。この時、指はダンパー機構の重さを感じます。一方、ダンパーペダルを踏むと、すべてのダンパーが弦から持ち上がり、弦は開放状態になります。この時に鍵盤を弾くと、指はダンパー機構の重さを感じません。このように、グランドピアノでは、ダンパーペダルを踏んでいる時と踏んでいない時で、指に伝わる重さが変化します。『NV10S』には弦はありませんが、このタッチが変わる特性を忠実に再現するため、あえて専用設計のダンパー機構を搭載。グランドピアノの自然な演奏感を追求しました。
鍵盤をゆっくり押した時の図
『NV10S』には、最新のカワイグランドピアノに組み込まれている「ウルトラ・レスポンシブ・アクションⅡ」を搭載。
主要部品に、最先端素材であるカーボンファイバー（炭素繊維）入りABS樹脂を使用することで、従来の木製アクションに比べ高剛性を確保しつつ、軽量化を実現しています。これによりタッチの軽やかさや、なめらかな連打性、弱打時の音量コントロールなど、さまざまなパフォーマンスが向上。豊かな表現力を求めるピアニストの、高度な要求にも応える一台になりました。
また、経年変化に強い素材のため、安定した品質を保ったまま、長く演奏をお楽しみいただけます。
タッチ感は、ピアニストにとって妥協できない重要なファクターです。だからこそ、『NV10S』の鍵盤にはアコースティックピアノと同じ贅沢な無垢材のみを使用しています。軽く、弾力性に富んだ無垢材は、スムーズな動きを生み出すだけでなく、パワフルな演奏を臨場感たっぷりに表現します。長年の経験に裏付けられた木材のコントロール技術を駆使し、入念なシーズニング*を行うことで、温度や湿度の変化に強い、高耐久な鍵盤に仕上げました。
*シーズニングとは…切り出した木材を寝かせ、時間を掛けて温度や湿度の変化に馴染ませること。伸縮による変形や変質などのトラブルを防ぎ、耐久性の高い木材に仕上げます。
カワイが大切にしている設計思想が、グランドピアノ「Shigeru Kawai」や「GXシリーズ」などにも取り入れられている長い鍵盤長設計です。
鍵盤はシーソーのように動きます。長いシーソーと短いシーソーを比較すると、シーソーの端に座る人の上下動の幅は同じですが、それより内側に座る人の上下動は、長いシーソーの方が大きくなります。つまり、鍵盤の手前の端を弾いた時はどのピアノもストロークは同じですが、奥を弾いた時のストロークは鍵盤が長い方が大きくなります。
このように、長い鍵盤は奥を弾いた時に、大きなストロークで弾けるので、軽く動き、楽に鍵盤を操作することができるのです。『NV10S』の鍵盤長は、長い鍵盤を持つカワイの「GXシリーズ」と同じ鍵盤を搭載することで、ピアニストの表現の幅を大きく広げます。
弦を叩くハンマーは、アコースティックピアノに欠かせないパーツのひとつ。88鍵すべてに取り付けられたそれは、低音部から高音部にかけて少しずつ小さくなっており、驚くことに一つひとつ重さが異なります。この違いも、ピアノのタッチ感を左右する重要なポイント。だからこそ、『NV10S』は重さの異なる88個のハンマーを搭載。弦を叩くハンマーの感触まで、“本物”にこだわり抜きました。
素材には、経年変化に強いABS樹脂を採用していますので、いつまでも変わらないクオリティでご愛用いただけます。
また、タッチによる自然な音量・音色変化を実現しているのが、カワイ独自の「インテグレーテッド・ハンマー・センシング・システム」です。ハンマーが弦を叩くスピードを、光センサーで読み取ることで、タッチのスピード感や強弱をよりリアルに表現。非接触型のセンサーなので、タッチ感に干渉することもありません。
カワイのグランドピアノを仕上げる熟練の職人が、鍵盤の高さやストロークの深さ、アクションの動きを揃える「整調」作業を担当。すべての鍵盤が同じ弾き心地になるよう、一つの鍵盤に対して10数か所にわたってこまやかな調整を繰り返し、カワイのピアノとして認められた製品だけが、市場へと出荷されます。
『NV10S』には、世界の国際ピアノコンクールで公式採用されているフルコンサートグランドピアノをはじめとした、3種類のグランドピアノ音色を内蔵。リッチで温かみのある「SK-EX」、煌びやかでクリアな「EX」、音に太さがあり粒立ちがよくまとまりの良い「SK-5」の上質な音色を、曲想やピアニストの好みに合わせて使い分けていただけます。
深みのある音を高精度で抽出するために、一般的な2チャンネルのステレオサンプリングに、ハンマー打弦点近くの音を追加。強打時の音色がよりリアルになり、音色のダイナミックレンジが広がることで、タッチの強弱による表現力が向上しました。
さらに「Pianoタブ」では、『NV10S』の電子処理能力を、88鍵すべての弦の響きをモデリングしたプログラムに全集中させることで、「SK-EX」の豊かな響きを究極まで再現しました。
最高峰フルコンサートピアノ「SK-EX」の音を、カワイの最新音源システムとオーディオメーカーオンキヨーのテクノロジーにより、忠実に再現しました。その性能は、単にハードウェアによるものだけではありません。世界のコンクールで活躍する最高レベルの調律師がピアノ音のサンプリングから最終仕上げまで監修、ピアニストによる厳しい評価と改良、オーディオメーカーのノウハウを生かした特別な音質チューニング、これらを重ねて最終性能が創り出されました。この結果得られたピュアで解像度の高い音色は、ピアノ演奏へのモチベーションを最大限に高めてくれます。
『NV10S』の表現力を支えるのが、高品質な「7スピーカーシステム」です。低音を下方向、中音を上方向、高音を前方向に配置することで、グランドピアノと同じ音の聴こえ方を再現。音はプレイヤーポジションで美しく調和し包まれるような音場感を体感いただけます。
鍵盤左側に配置されたカラー液晶タッチパネルでは、低音、中音、高音のこまやかなバランス調整が可能。いつでも、最適な音質で演奏をお楽しみいただけます。
『NV10S』には、従来のサウンドシステムを強化した新しいサウンドシステムを搭載。より迫力のある重低音を実現。また、中高音のスピーカーポジションを再設計することでピアニストへ自然な音色を届けます。
NOVUSは、鍵盤タッチに対する音の出方を調整するタッチカーブ、ハンマーの硬さによる音の違いをつくり出すボイシングなど、22項目にわたるピアノ調整機能を搭載。つくりあげたピアノ音を保存しておけば、いつでもお好みの音で演奏することが可能です。NOVUSの全ての機能は、鍵盤部の左側に配置されたカラー液晶タッチパネルによって、タッチやスワイプなどスマートフォンの感覚で操作することができます。
NOVUSは、音の広がりをつくりヘッドホンでの演奏を快適にする機能も搭載。全方向にバランスのとれたノーマル、左右の広がりを強調したワイド、前方への定位を強調したフォワード、の3つの選択が可能です。どのモードを選んでも、自然な音の広がりにより、長時間ヘッドホン演奏を続けても疲れにくく、快適な演奏を楽しめます。
視覚が受け取る刺激は、音楽表現に大きな影響を与えます。グランドピアノに相対した時の高揚感は、心地良い演奏体験を叶える、大切な要素のひとつです。『NV10S』は、ピアニストの視点にフォーカスし、椅子に座った際の視界の抜け感やポジション、風格のある鍵盤周りのしつらえなど、グランドピアノのピアニストビューを追求しました。
グランドピアノの代名詞とも言える、エレガントな黒艶塗装を施した『NV10S』。その美しい外装は、カワイでつくられるグランドピアノと同じ、厳しい検査項目によって保たれています。高級感あふれるピアノの外観を『NV10S』に―カワイの想いを、惜しみなく注ぎ込みました。